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東京高等裁判所 昭和25年(う)1029号 判決

被告人

金正福

外一名

主文

本件控訴はいづれもこれを棄却する。

訴訟費用は被告人両名の負担とする。

理由

前略。

同控訴の事由第三乃至第十について。

按ずるに、公判調書の記載が正確を要すること洵に所論の通りである。弁護人は原審公判調書に本件犯行供与の証拠物件を、被告人に示した旨の記載があるが、これは、常識且つ事実に反する虚構の調書であり、而もこれを証拠として断罪の理由として居ることは、明らかに法令に違反する旨主張するけれども、本件押収に係る証拠物件中、その体積の最大のものと思料せられる三石桶について考察するも、これを公判廷に顕出することの可能なることが、何等常識に反するものとは認め難く、その余の一石桶以下に至つては顕出可能であることは説明を要しないところである。而して、公判期日に於ける訴訟手続で公判調書に記載されたものは、公判調書のみによつてこれを証明することができることは刑事訴訟法第五十二条に明定するところである。本件記録を精査するに、昭和二十五年一月十二日の公判調書に、裁判官は被告両名に対し、各証拠物を示して居る旨の記載があり、該公判調書の記載につき異議の申立をして居ない本件に於いては、該記載が事実に反する虚構の記載なりと主張することは、これを許容することができない。従つて、該公判調書の記載を証拠と為し得べきは勿論、これを証拠として、判示事実を認定するも事実の誤認ありと言うことはできない。所論は徒らに、憶測を逞しくしての独自の見解に基き原審公判手続の違法を主張し、延いては原判決を論難するものにして、到底採用し難く論旨は孰れも其の事由がない。

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